サルガドの写真制作のスタイルは、まず始めに綿密なコンセプトをたて、長期間に渡って精確にその事実を記録してゆくという、非常にオーソドックスなドキュメンタリースタイルが特徴だ。
今回は、1970年代から撮り続ける「アフリカ」シリーズと、彼の最新プロジェクトである「ジェネシス」と云うシリーズなのだが、その中の数点の写真に釘付けになった。
まずひとつ目は、アフリカの中から、大きな橋を、ゴザかスダレの様なものを頭の上に乗せた女性が、カメラ目線で写っている写真。
広角レンズで撮られたその一枚は圧倒的な迫力で、ファッションフォトと見まがうばかりだ。
二つ目はジェネシスの中のランドスケープの写真。
広大なアフリカの大地に、巌然と生き建つ絶壁と植物を、縦位置で捕らえた一枚。
まるで水墨画の様な、白黒グレーから成る無限の世界は、ミクロにしてマクロ、その一枚に東洋の仏教思想が集約されている様な圧倒的な世界観だった。
三つ目もジェネシスから、乾燥したアフリカの大地で、瑞々しく伸びやかに生きる植物の写真。
植物の持つ質感のエロティシズムと形の幽玄さが、完璧なプリント技術で再現されていた。
サルガドの写真は、綿密なコンセプト、優れたコンポジション、非常に質の高い現像プロセスとプリントプロセスによって出来ている。
ドキュメンタリーフォトグラファー特有の、画面の荒々しさとは対局で、まさに凍結した時間と云った、スカルプチュア的緊張感がある。
僕はかつて、ドキュメンタリースタイルの写真でここまで技術的水準の高い作品を見たことがない。
質的には杉本博司と似ていなくもないが、何かが決定的に違う。
それを正確に言葉にするのは、今の僕ではまだ無理だ。
ご興味のある方は是非観に行ってみてください。
確か本日(13日)までだった様な…
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